連載 a serial

連載ー1
小説「フィルム、ヴィデオ、デジタル」


この小説に登場する人々

ト書き 中島崇。シャローック・ホームスのワトソン医師役もどき
細江さん(Aさん) 実質的には主人公
藤野さん(Dさん) 96歳の隣の人。婆さん
国貞さん(Eさん) Aさんの知り合い。眼光が鋭い
澤田さん(Bさん) 中島と会話した人物。Cさんを母親にもつ

「般若心境」にしては変なお教だなと思いながら、いつも通り唱えている。
「般若心境、藁藁、般若心境、藁藁……」と。たまに気分で「藁藁、般若心境、藁藁、般若心境……」となる時もある。要するにいい加減なのだ。意味を教えてほしいと言う輩にはダンマリ戦術だ。
 例えもし誰がちょいと触れたぐらいじゃ彼の反応は鈍いに違いなっかたが、それは本物だった。その証拠に彼はこう言ったのだ。
「藤江さんじゃない。よく植木について語っていた藤江さんじゃない?」
「はは、そうそう。でもあの植木どうしちゃたかな。隣の中島さんお崖の下で、よく咲かせていたんだよ」
「俺も以前はリコーダーをやっていてね、「海」なんか上手いのが問題だね。……今は編み物だけど。帽子を作らなきゃ……ならない」
「私は植木の一辺倒……」
「ほら、サーモ付き顕微鏡によると頭の前葉が赤くなるよ。集中している証拠だよ」
 この人たち相変わらず話が噛み合わない、自分のことだけは語り合うが、と思う。

 藤江さんはいつも細江さんと先頭を争っている。そこに割り込んできたのが国貞さんで(Eさんが)人を連れてきた。何と澤田さんと(Bさん)と一緒だ。細江さんは慌ててリコダーを取り出した。
 俺はプライベートながら、澤田さんと最初に話し始めたのは自分が最初とばかり列の初めに行ったものだから、列の初めは少しばかり乱れ始めた。俺は澤田さんと話し好んで「気になっていた澤田さんの「お母さん(Cさん)は病気がちだが何とか生活ができていると言う。国貞さんとはあの夜高円寺あたりで呑んでた時に知り合い、互いにやばいことをやって死ぬ目に遭ったのだ」と情報を得た。
 最初はいくらか先頭が入り組んでしまったけれど、ここは細江さんを頼って現れた人たちだ。「おい細江さん、宴会をやるのはお前だよ」と言いかけたが、無理だった。列から離れてどこかに行ってしまった。
「般若心境、藁藁」と、どこかに行って唱え始めた。